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町長コラム

  • 幌尻岳(ポロシリ)

     当町に座する幌尻岳(ポロシリ)は、日高山脈襟裳国定公園の最高峰で日本百名山の一つともなっています。アイヌ語で「ポロ」は「大きい」、「シリ」は「山」を意味します。
     アイヌの人々にとってポロシリ周辺やその上空はカムイたちが集う神々の世界であり、位の高い神、ポロシルカムイが住む山として祈りの対象とされ、大切な祈りがポロシリに対してささげられてきました。

     幌尻岳は悠然たる日高山脈の無数の峰のなかで最高峰の山(2,052m)ではあるのですが、大きい「ポロ」と感じる視点場は日高沿岸や十勝側でもないのではないかと思っていますし、平取町内でもそれを認識できる場所は限られています。

     町内の群生地でスズランが咲き始める5月の半ば、景観を共有する里の低山が緑になる中、いまだ白い山肌を青い空が浮き立たせる晴天の日に、町内の限られた視点場から見るポロシリの姿は本当に美しい。まさにアイヌの人々が、神が宿る山だと信じたことも納得がゆく思いがするのです。

     幌尻岳を含む日高山脈襟裳国定公園は、今、環境省などで国立公園化に向けて様々な検討が始まっています。国立公園になればその面積は国内でも最大級の規模になるともいわれ、将来にわたりここにしかない貴重な動植物の保全等が強化されるとともに、地元への観光客や登山客の入込の増による経済的な効果も期待されるところです。

     平取町からの登山ルートは「額平川ルート」と呼ばれ、奥新冠ダムに山を貫いて水を送る取水ダムから幌尻山荘までは沢登りとなり、十数回渡渉(沢をわたる)を繰り返します。
     原生林の中をこのうえない清い流れの沢をわたりながらの山荘までの行程は、まさにカムイのいる領域に分け入る感覚と感動を覚える時間でもあるのです。

     私も十数年前までは、平取町山岳会の一員として頻繁に登る機会がありました。また、山頂まではいかなくても幌尻山荘の管理のお手伝いのために山荘までは行くこともたびたびあったのですが、ここ数年、仕事で時間を割けないことや、加齢による体力の衰えを言い訳に、登山や山荘の維持活動に足が遠のいています。ベルトのうえにオーバーハングする腹肉の除去のための運動も兼ね、基礎体力を取り戻し、いつかまた、ポロシリの山頂に立ち氷河が切り取った北カールのお花畑を眺め、至福の時間を過ごしたいと思いを巡らせています。

     この5月で新型コロナウイルス感染症も取り扱いが変わり、幌尻岳にも通常の登山シーズンが戻ってきます。山行や深い自然に身を置くことは、日常の暮らしに少し距離を置き、自身を見つめなおす時間となって、これからの生活のための新たなエネルギーを得るきっかけになるのではないかと思っています。機会があれば日高山脈の最高峰、平取町の最高峰にチャレンジしてみてはいかがでしょう。

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