我が家から職場まで約2kmの距離がある。通勤はほとんどが車を使うが、健康増進やダイエットを兼ねて徒歩や自転車での通勤ができないかを考えていた。
数年前にも自転車での通勤を試みてはいたが、昼食に自宅に戻ることや、遅い帰宅も多かったこと、そしてこれが最大の理由だが、帰りの坂道を上りきることができない脚力の低下により自転車通勤を断念せざるを得なかったのである。
しかし、時代は変わった。私が少年の頃、「遠藤商店」の屋号のついた、三角乗りして転んでも起こすことのできない重い自転車の時代から、幾多の技術革新を経て、今やモーターが漕ぐ力を補助してくれるバッテリーつきの電動アシスト自転車が登場したのだ。
すでに愛用している職員の感想なども参考に、今年の夏に一大決心し購入した。
素晴らしい加速。脚力がよみがえったような感覚。坂道もなんなくすいすいと登る。文明の利器により自転車通勤が可能になった。事故には気をつけてできる限り続けたいと思っている。
いつものクルマ通勤とは違い、風や気温、季節の香りや音を感じながら走る爽快感が心地よい。そして、自転車通勤により気づいたことがある。同じ道を通っても、目線やスピードが変わるだけで日常の風景はずいぶん印象が変わってくるのだ。道端の花や木々の変化、すれ違う高校生の様子、雨の後、必ず水たまりになる場所、どこかの家から漂う夕食の匂いなど、まちの息吹のようなものが伝わってきて新鮮な気持ちになることが多い。日常のなかの新たな発見といってもいいかもしれない。
こういうものだと思いこんでいたものでも、少し視点を変えてみることで、ずいぶん魅力的に見える時があることを知らされる。「くらしや仕事にも、時には少し視点を変えて向き合うことが大切だよなぁ。」
そんなことを思いながら電動モーターの力を借りて、帰路の坂道でペダルを強く踏むと自転車はぐいぐいと進み、トマト選果場の上空のきれいな夕焼けが見えてきた。
遠藤 桂一